解決事例
- 2026.06.25
- 自社株の相続で揉めないための5つの備え
自社株の相続は、ふつうの相続とは少し違う重みを持ちます。預金や不動産と違って、株式は会社の支配権そのものだからです。誰が何株持つかで、会社の意思決定が変わってしまいます。
ご相談で多いのは「父が会社の株を全部持っていた。亡くなったあと、兄弟でどう分ければいいのか」というご質問です。法定相続分どおりに分けると公平に見えますが、経営はかえって不安定になります。一方で後継者ひとりに集中させると、他のご家族から不満が出やすくなります。
この記事では、自社株を相続するときに知っておきたい法律の基礎、後継者へ渡すための備え、相続税と納税資金、そしてご家族が揉めないための工夫を、実務目線で整理してお伝えします。
目次
自社株を相続するとなぜ揉めやすいのか

この章では、自社株が他の財産と違う「揉めやすさ」の理由を整理します。
経営権が分散して会社が動かなくなる
株式は議決権そのものです。相続人が複数いて、株が法定相続分どおりに分かれると、経営判断のたびに全員の足並みをそろえる必要が出てきます。実務上は、経営に関わっていないご家族が株主になることで、重要な議案が通らなくなる事態も起こります。
株を相続しても単独で議決権を使えない場合がある
意外と知られていないのが、共同相続された株式は相続人全員の共有状態となり、会社との関係では、原則として権利行使者を一人定めて会社へ通知しなければ、議決権を行使できないという点です。会社法第106条に定めがあります。
遺言で「長男にすべての株を相続させる」と書かれていない限り、相続開始の瞬間に後継者が単独株主になるわけではありません。ここを見落とすと、遺産分割が長引くと、重要な議案の場面で会社の意思決定に支障が出ることがあります。
評価額がついても現金化しにくいという矛盾
非上場株式は、相続税の計算上は評価額がつきます。会社の規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、両者の併用方式で評価されます。ところが、市場で売れる株ではないため、納税のために現金化することが極めて難しいのが実情です。
評価は高いのに換金できない。この矛盾が、自社株相続を難しくしている根本的な理由です。
自社株の相続に関わる法律と制度の全体像
この章では、自社株の相続を考えるうえで土台になる法律と制度を整理します。
民法と会社法で何が決まるのか
相続が発生すると、民法第896条により、被相続人の財産は相続人に承継されます。株式も同じです。相続人が複数いれば、民法第898条により共有状態となり、誰が取得するかは民法第907条の遺産分割で決めることになります。
ここに会社法が重なります。共有株式の権利行使者の選定(会社法第106条)、譲渡制限株式に対する売渡請求(会社法第174条以下)、種類株式の活用(会社法第108条)など、会社固有のルールが効いてくる点が、ふつうの相続との違いです。
非上場株式の評価ルール
相続税を計算するときは、非上場株式にも評価額をつけます。一般的には会社規模等に応じて類似業種比準価額方式、純資産価額方式、または併用方式で評価されます。評価額は会社の業績・純資産・配当などで変動するため、毎年の決算内容が次の相続税額に直結します。生前の段階で概算を把握しておくと、対策の選択肢が広がります。
2026年に押さえておきたい改正点
近年の改正のうち、自社株相続に直結するものが二つあります。
一つは、法人版事業承継税制の特例承継計画について、提出期限が1年6か月延長され、2027年9月30日までになったことです。もう一つは、純資産価額方式で評価額から差し引く「評価差額に対する法人税額等相当額」の計算割合が、2026年4月1日以後の相続・贈与では、純資産価額方式の計算に用いる法人税額等相当額の割合が37%から38%に見直されている点です。
評価方式の前提が変わっているため、数年前の試算をそのまま使うのは危険です。
後継者へ自社株を集中させる5つの備え

この章では、揉めずに後継者へ株を渡すための具体的な備えを5つの軸で整理します。
遺言書を作成する
最も基本的な備えが遺言書です。後継者へどの株を相続させるかを明確にしておけば、遺産分割協議の段階で経営が止まるリスクを下げられます。
自筆証書遺言は手軽ですが、形式不備のリスクがあります。自筆証書遺言書保管制度を使えば、3,900円で公的に預けることができます。公正証書遺言は手数料が財産額に応じて変動しますが、紛失や偽造のリスクがない点で、自社株を含む遺言には向いています。
定款と株主名簿を見直す
実務でご相談を受ける中で多いのは、「定款が古いまま」「株主名簿が更新されていない」というケースです。定款に譲渡制限や相続人等に対する売渡請求の条項があるかどうかで、相続後にとれる選択肢が大きく変わります。
株主名簿が整っていないと、相続が起きてから「誰が本当の株主なのか」を確認する作業から始める羽目になります。生前のうちに、定款・株主名簿・株券発行の有無を一通り点検しておくと安心です。
遺留分に関する民法特例の活用
後継者へ株を集中させると、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分は民法第1042条で定められた、最低限の相続分です。
経営承継円滑化法には、一定の要件のもとで、後継者へ贈与した自社株を遺留分の計算から外す「除外合意」や、評価額を固定する「固定合意」という民法特例があります。家族全員の合意が前提になりますが、争いの種を生前に取り除く強力な手段です。
種類株式・売渡請求条項の検討
会社法第108条の種類株式を使えば、議決権制限株式や拒否権付株式を発行することができます。後継者には議決権のある普通株を、他のご家族には議決権制限株や配当優先株を渡すことで、経営権を集中させつつ財産的な公平感も保てます。
種類株式や売渡請求に関する定款整備をしておくと、相続後の経営権分散リスクを抑えるための選択肢を増やせます。これらは商業登記が必要になるため、司法書士の関与が欠かせない領域です。
相続税と納税資金の準備
この章では、相続税の負担と、現金が足りないときの選択肢を整理します。自社株相続でもっとも実害が出やすい部分です。
事業承継税制という選択肢
非上場株式についての相続税・贈与税の納税猶予・免除を受けられるのが、法人版事業承継税制です。特例措置を使うには、特例承継計画を都道府県へ提出し、認定を受ける必要があります。
事業承継税制を使うと、一定要件のもとで相続税・贈与税の納税猶予を受けられ、一定の事由に該当したときは免除されることがあります。適用判断は税理士と連携した慎重な検討が必要です。
生命保険・延納・物納の使い分け
納税資金が足りない場合の選択肢は複数あります。生命保険は、相続人が受け取る死亡保険金に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、納税資金の準備に活用されます
相続税の延納は、一定の利子税を払いながら分割で納める制度です。物納は、相続財産そのもので納める制度ですが、非上場株式は物納財産の第2順位で、要件は厳しめです。「自社株は絶対物納できない」というのは誤解ですが、簡単に使える制度でもありません。
千葉県内の都市部で起こりやすい資金問題
千葉県内でも、柏のような都市部では地価が高く、自社株に加えて不動産の評価額が積み上がるケースが見られます。実務では、株式と不動産の両方で相続税評価が膨らみ、現金が足りなくなるというご相談があります。
成田や四街道のような住宅都市でも、ご自宅や事業用不動産が相続財産に含まれると、相続税申告期限の10か月以内に納税資金を確保する難易度が一気に上がります。
ありがちな誤解とトラブル事例

この章では、自社株相続でよく見かける誤解と、現場で起こりやすいトラブルを取り上げます。
「遺言を書けば安心」という誤解
遺言で後継者へ株を集中させても、遺留分の問題は別に残ります。経営に関わらないご家族から遺留分侵害額請求を受け、後継者が多額の現金を支払うことになる事例は珍しくありません。
遺言は経営権集中には有効ですが、家族間の現金的な調整は別途設計が必要です。遺留分に関する民法特例や、生命保険を組み合わせるのが実務的な解決策です。
「法定相続分どおりが公平」という誤解
兄弟姉妹で株を等分すれば公平に見えますが、会社経営の観点では公平ではありません。経営に関わらない方が株主になると、経営判断ごとに調整が必要になり、結果として全員にとって不利益になります。
財産の公平分配と、経営権の集中は別の問題として設計するのが、実務の基本です。
実務でよく見るトラブルの典型
現場では、次のようなパターンが繰り返し起こります。
一つ目は、遺言がないまま相続が発生し、共有株式の権利行使者が決まらず、株主総会が開けなくなるケースです。
二つ目は、後継者は決まっていても、納税資金が足りず、会社の自己株式買取や事業の一部売却に追い込まれるケースです。
三つ目は、定款に売渡請求の規定がなく、株が経営に関わらないご家族や第三者に渡ってしまうケースです。
いずれも、生前のうちに手を打てば防げた事例ばかりです。
専門家へ相談するタイミングと判断基準

この章では、いつ・誰に相談すべきかの判断軸をお伝えします。
自分で進められる範囲と難しい範囲
ご自身で進めやすいのは、戸籍の収集、遺言の下書き、家族構成と財産目録の整理までです。一方で、定款の改正、株主名簿の整備、種類株式の設計、事業承継税制の適用判断、遺留分対策の設計は、専門家の関与が現実的です。
「自社株がある」というだけで、相続は一気に複雑になります。早めに全体像を相談しておくと、選べる打ち手が増えます。
司法書士・税理士の役割分担
定款整備や登記、法定相続情報の取得などは司法書士が関与しやすく、株価評価や税制適用判断は税理士への確認が必要です。
両者の連携が要る局面が多いため、ワンストップで動ける事務所に最初に相談すると、二度手間が減ります。
千葉県内で相談する際の窓口
自社株の相続は、会社法・民法・税法・登記実務が複雑に絡み合うため、相談先選びで結果が大きく変わります。生前対策から相続後の手続きまで、長期で伴走できる専門家を選ぶことが大切です。
まとめ
自社株の相続は、経営権・税金・家族関係の3つを同時に設計しないと、どこかにしわ寄せが行きます。法定相続分どおりに分けると経営が不安定になり、後継者に集中させると遺留分の問題が残り、税制を使えば要件維持の負担が長く続きます。

司法書士法人ふらっとでは、成田市・四街道市・柏市の3拠点で自社株の相続に関するご相談を受け付けています。対面相談はもちろん、オンラインでの無料相談にも対応しており、夜間や土日祝日も事前予約によりご利用いただけます。「うちの場合は何から始めればいいのか」という段階からお気軽にご相談ください。

当事務所は創業20年以上の実績を持ち、これまでに累計8,500件以上の相続相談に対応してきました。相続・遺言・家族信託など幅広い分野の相談窓口を運営しており、経験豊富な司法書士がチームでサポートいたします。(相続相談件数:2026年4月時点)
正解は一つではなく、ご家族と会社の状況によって変わります。だからこそ、生前のうちに全体像を整理しておくことが、何より大切です。

















































